【階段でのヒヤリハットの原因とは?】
『階段事故の対策方法を解説』 2024年12月12日 LinkedIn Facebook Twitter
階段では滑りや踏み外し、つまずきなどによる「ヒヤリハット」が起きやすく、適切な対策をしていないと大きな事故に発展することがあります。
特に床面が濡れている場合や荷物を持っているとき、焦っているときなどは注意が必要です。
本記事では、階段でのヒヤリハットの原因や、階段事故が起きやすいケース、事故を防ぐための対策について解説します。
・階段でのヒヤリハットの主な原因
▲足を滑らせる
▲足を踏み外す
▲段差につまずく
▲手すりが滑る
▲階段上での作業
・階段で事故が発生しやすい主なケース
▲両手に荷物を持っているとき
▲床面が滑りやすいとき
▲「ながら」で注意力が散漫になっているとき
▲「焦り」で慌てているとき
・階段事故の対策方法
- 個人の意識・心がけでの予防
- 作業方法での予防
- 環境面での予防
『ヒヤリハットとは』
ヒヤリハットとは、重大な事故につながる一歩手前の出来事のことです。
厚生労働省兵庫労働局は、「危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事象」※と定義しています。
業務中に事故が起こりかねない状態になったとき、「ヒヤリ」としたり「ハっと」驚いたりすることからこう呼ばれます。
ヒヤリハットは、「1:29:300の法則」(ハインリッヒの法則)と呼ばれる概念と関連しています。
これは、1件の重大な事故の背景には、29件の中規模な事故と300件の小規模な事象(ヒヤリハット)が存在するという法則です。
重大な事故を防ぐためには、ヒヤリハットが発生したときに原因を追究し、再発防止策をとることが非常に重要です。
施設内で重大な事故を避けるためには、事故につながりかねない事象である「ヒヤリハット」を防ぐことが重要です。
ヒヤリハットを防ぐためには、単に「大きな事故にならなくてよかった」と安心するだけではなく、その原因を把握し、対策をしっかりと講じる必要があります。
本記事では、工場・倉庫におけるヒヤリハットの原因と事例、対策を解説します。
※出典:厚生労働省兵庫労働局「ヒヤリハット活動でリスクアセスメント」
『階段でのヒヤリハットの主な原因』
ヒヤリハットはさまざまな場所で起こりますが、階段で発生することも少なくありません。
階段でヒヤリハットが発生する主な原因としては、以下のパターンがあります。
▲足を滑らせる
足を滑らせることは階段でのヒヤリハットの代表的事例であり、天候や気温などの環境や階段の表面の状態、靴の状態が原因で発生します。
環境面では、雨や雪、霜、氷により階段表面が濡れたり凍結したりして滑りやすくなることが主な原因です。
靴の状態としては、底がすり減った状態だと滑りやすくなります。
滑り止めの加工が施してあっても、長年使い続けていると摩耗するので注意が必要です。
階段の表面の状態としては、石やタイル、金属などの材質は特に湿っているときに滑りやすくなります。
また靴底と同様に、階段の表面も長年の使用により摩擦が減少し、足を滑らせやすくなります。
▲足を踏み外す
足の踏み外しは、視認性が悪い薄暗い場所や、荷物を持っていて手すりが掴めない場合に発生しやすいです。
照明が十分でないと、夜間や薄暗い環境で階段の各段やエッジが見えにくくなり、踏み外しが発生しやすくなります。
後ろ向きに歩く場合や階段に障害物がある場合に踏み外しやすいほか、スマートフォンや書類などを見ながら歩行する際にも足元への注意力が散漫になり危険です。
足元が見えにくい、急いでいるときなどは特にリスクが増加します。
▲段差につまずく
階段を上っているときに段差に気づかずつまずくケースがあります。
つまずきは、周囲が暗く段差が認識しにくい場合や急いでいる場合に起こりやすいです。
階段の各段の高さや奥行きが一定でない場合は、足元が不安定になり予期せぬ段差で転倒を引き起こすことがあります。
特に、長時間の労働で疲労が溜まっているときや、高齢の従業員が階段を利用するときは特に注意が必要です。
▲手すりが滑る
手すりを持っていても、汗や湿気、雨・雪などが原因で滑り転倒することがあります。
手すりの清掃が不十分な場合や滑り止め加工が施されていない場合、また金属製の手すりが濡れているときなどに滑りやすくなります。
▲階段上での作業
階段上で作業を行っているときは転倒するリスクが高いです。
特に、脚立や踏み台を使用しているとバランスを崩しやすくなります。
狭い空間や不安定な足場などでの作業も転倒の原因となるケースがあるほか、階段上で重い物を持ち上げたり、工具を使用したりする際にもバランスを崩しやすくなります。
『階段で事故が発生しやすい主なケース』
階段での踏み外しやつまずきなどによる事故は、以下のようなケースで発生しやすくなります。
▲両手に荷物を持っているとき
両手に荷物を持っているときは、基本的に手すりを掴むことができません。
そのため、足を滑らしたり踏み外したりしやすくなります。
また、両手がふさがっているため、転倒時に受け身を取れないことで大きな怪我につながる危険が増します。荷物が大きい、あるいは重い場合はさらにバランスを崩しやすくなるので注意が必要です。
▲床面が滑りやすいとき
雨天や階段の床面の汚れが原因で、床面が滑りやすくなることがあります。
特に、屋外の階段は雨天時に床が濡れていたり冬季に霜や雪が付着していたりする場合や、靴底が濡れていたりする場合に滑る危険性が増します。
また、粉塵や土砂、油などが靴底や床面に付着していると、床面と靴底の間の摩擦力が減り滑りやすくなります。
▲「ながら」で注意力が散漫になっているとき
話をしながら、よそ見をしながら、考え事をしながら、スマートフォンを見ながらなど、「ながら歩き」は事故の主な原因の一つです。
例えば、スマートフォンを使用していると足元や周囲への意識が低下し、各段やエッジが見えにくくなります。また、「ながら歩き」で注意が他のことに向いていると、滑りやつまずきなど突発的な状況変化に対する反応が遅くなり、大きな事故につながるおそれがあります。
▲「焦り」で慌てているとき
「焦り」も転倒や事故の原因となります。
時間に追われているときや、物を落としたときなど、焦りが生じると歩行や周囲の状況に注意が向かなくなくなり、転倒や事故を引き起こしやすくなります。
階段を早足で駆け上がったり駆け下りたり、一段飛ばしで昇降したりすることも事故の元です。
さらに、焦っていると床面が濡れている、凍結しているといった状況を見落としがちになり、滑る可能性も高まります。
★階段事故の対策方法
階段での事故を防ぐためには、以下の点に注意することが大切です。
『個人の意識・心がけでの予防』
☆必ず手すりを持つこと
手すりを持つことでバランスを保つことができ、転落のリスクを抑えられます。手すりを持てるように、両手に荷物を持たずに階段を使用することを心がける必要があります。手すりは途中で途切れることなく、上から下まで使用し続けることが重要です。
☆「ながら」を禁止すること
スマートフォンを使用したり話したりしながら階段を使うと、足元への意識が低下し、段差を認識できずに転倒する可能性が高まります。階段使用時は、階段の昇降に集中し、他の作業は避けることが大切です。
☆滑りにくい靴を履くこと
靴底の滑り止めがきかなくなっている場合、滑る危険が増すため危険です。滑りにくい素材や滑り止め加工が施された靴底の靴を履くことを徹底し、摩耗したらすぐに買い替えることで足元の安定性が向上します。
『作業方法での予防』
☆作業を行う場合は長時間や連続作業は避けること
長時間、あるいは連続で作業を行っていると疲労が蓄積し、注意力が低下して階段での事故が発生しやすくなります。こまめに休憩を取って疲労を防ぐことや、作業時間を明確に区切り集中力を維持することが重要です。
☆慌てなくても済むように時間に余裕を持つこと
階段では、急ぐことで転倒や踏み外しのリスクが高まります。焦りを生じさせないように、時間に余裕をもって行動することを心がけ、落ち着いて階段を使用できる環境を整えることが必要です。
『環境面での予防』
☆階段にはモノを置かないこと
階段にモノを置くと足元が見えにくくなり、転倒やつまずきの原因となります。通行の妨げになり、非常時に避難が遅れる原因にもなるため、階段にはモノを置かないよう徹底しなければなりません。
☆屋外階段は雨天時を避けること
雨天時は屋外階段が滑りやすくなり、転倒のリスクが高まるため、可能な限り使用を避けて別のルートで移動することがベターです。やむを得ず使用する場合には必ず滑りにくい靴を履き、いつも以上に注意を払います。
☆高輝度蓄光製品が備わっているノンスリップ製品などで階段の視認性を高めること
暗い場所で階段を使用すると、足元の段差を認識しにくくなるため危険です。
暗所での事故リスクを軽減するため、夜間や薄暗い環境では必ず照明を点け、視認性を高める必要があります。
照明を設置することが難しい場合や光量が少ない場合は、高輝度蓄光製品が備わっているノンスリップ製品を設置ことも効果的です。
階段の端に高輝度蓄光製品が備わっているノンスリップ製品を設置ことで、段差を明確にすることで暗所でも安全に移動できるようになります。
暗い階段や電源消失時に避難などに使用する階段には高輝度蓄光製品が有効です。